この世で〈幸せな人〉と〈不幸せな人〉 どっちが多いのかな? < zig zag mood > ( こいつはどうあっても幸せだ・・・ ) 内心 呆れた様なため息をつき 満面の笑みでリンゴを食べている友人 ミツキを見ながらトキヨはそんなことを思っていた 「 んぁ? どしたの?? 」 キョトンとした表情でミツキはトキヨに疑問符を投げた 「 何も。 」 あっさりと返答し 軽く伸びをしながら「 そろそろ帰るわ 」とすっくと立ち上がった 元々トキヨがミツキの所 もといナルトの家を訪れたのは一楽の一人娘アヤメさんがくれた リンゴをお裾分けする為であったわけで長居する気は無かったのだが・・・ ミツキの「 聞いて!聞いて!! 」が始まったので 否応無くいる羽目になったのだ 「 ごめんね まさかこんなに時間が経っているとは・・・;; 」 「 いいよ いつもの事ですし? 」 と 意地悪く笑うトキヨに対し あはは、と玄関先まで見送りに来たミツキが苦笑していた すると ゴロロ、と空が低く呻いた 「 傘 貸そうか? 」 「 ダッシュすればギリギリっしょ 」 じゃ、と走り去るトキヨの背中をミツキは見送った そしてミツキの心配をよそに空は泣き出した・・・ ************************************** **************** 街中は雨の到来で人通りが少なくなっていった そんな中―――・・・ 「 あーらら 降り出しちゃったか 」 全く緊張感の無い口調で物言うのは 上忍・はたけカカシ その人だ カカシは彼の愛読書 [ イチャイチャシリーズ ] の新書を買うべく書店を訪れてものの 運悪く雨に降られ 軒先で空を見上げていた 首の後ろを摩りながら んー、と考えていると < あるもの > が目に飛び込んできた 「 ・・・トキヨ? 」 雨に霞んでいるが 確かに彼女だった 雨粒が降り注ぐ中 トキヨはそれを避けようともせずに淡々と歩みを進めている 流石に驚いたカカシはトキヨを呼びとめ すかさず走り寄った 「 ・・・どうしちゃったのよ そんな格好で・・・ 」 「 ・・・ 」 見ると髪のみならず衣服からも水滴が滴っており どれほどの時間 雨に打たれていたが一目で分かる にもかかわらず 何事も無い様に平然としているトキヨ 明らかに普段とは違っているが・・・ 「 とにかく どっかで雨宿りしよっか? 」 と いつもの様に笑いかけ トキヨの手を取ろうとカカシが手を伸ばすと――― 「 ・・・っ 」 「 トキヨ? 」 途端に彼女はカカシを避けるように後ろへ身じろいだ そして 「 何で雨に打たれちゃいけないの? 」 トキヨは真直ぐにカカシを見ると踵を返し 雨の中に消えた・・・ 「 ・・・どうして・・・だろうね・・・・・・ 」 カカシは空を仰ぎながら < 答え > を探していた―――・・・ ************************************** **************** 演習場――― そこにある慰霊碑の影に小さくなりながら トキヨは独り膝を抱えていた どうしてあんな事を云った・・・? ・・・ただ 放っておいて欲しかった そんな我侭のためにカカシを困らせた ( 最低だ・・・俺・・・ ) でも あれが限界だった・・・ あれ以上一緒にいたら ・・・モット 辛カッタ・・・ 何がこんな気持ちを作るのか 原因はひとつ < 自分の弱さ > それはトキヨ自身が一番よく理解している だが それでも拭えないのは今 自分がいる世界が要因なのだ ここはミツキにとって夢にも見た 〈 最も愛する人がいる世界 〉 きっと幸せに満ち溢れている それに対して 自分は? 愛しく想う人はいる ここに似た世界の住人 でも ここにはいない・・・ なぜ? ミツキは逢えて 俺は逢えない? そんな やりきれない気持ちがカカシに会って弾けてしまった・・・ 込み上げてくる何かに耐え切れず 両の手で顔を覆った その時 ふいに雨がやんだ 雨音がするのに自分にはかからない ふと、顔を上げる と――― 「 みーつけた。 」 そこには自分に傘をさしてくれているカカシがいた いつもと同じ笑顔で いつもと同じ口調で 「 ―――っ! 」 先程の事もあり その場から逃げようとするトキヨの手を取り カカシはそのまま胸に閉じ込めた 腕を突っぱねて抵抗するが相手は男 ましてや忍なのだから敵うはずが無い 「 離せ!ばか!! 」 「 ダーメ。また逃げるでしょ? 」 「 うっさい!離せッ・・・離せよ!! 」 まるで駄々をこねる幼子のように抵抗するトキヨ だが カカシは決して離してはくれない 「 あのね さっきの答え分かったよ 」 「 うるさい!うるさい!! 」 柔らかい言葉で接してくるカカシにトキヨはただ一言を繰り返し 首を横に振るだけ そんな彼女をぎゅっと抱きしめ 答えた 「 消えちゃいそうだから 」 トキヨは大きく目を開き 一瞬驚くも再び抗い始めた が 先程に比べると必死さや勢いが無い カカシは言葉を続けた 「 ほーんと 雪みたいに溶けてなくなっちゃいそうで 」 「 うるさいっ 」 「 そーなったら すごーく悲しいよ?俺 」 「 ・・・うるさい! 」 「 トキヨちゃん達の唄 綺麗で好きなのになあ 」 「 ・・・るさい・・・っ! 」 「 ねえ もう一回唄ってよ あそこが好きだなあ 『 天からの 君からの 陽の光を待っている人がいるだろう 』ってところ。 」 トキヨは彼の言葉に徐々に肩の力が抜け 抗う事を止めていた・・・ 暫く黙っていると 「 唄って? 」 とカカシがそっと囁いた すると――― 「 ・・・俺は〈 太陽 〉じゃない 」 少し掠れた声でトキヨはそう答えた カカシはトキヨをゆっくり離すと目を合わせ やんわりと微笑んだ 「 うん でも俺にとっては同じくらい温かい光だよ 〈 月夜 〉は・・・ 」 瞳に残る涙をそっと拭い そのまま頬を包んだカカシの手がとても温かく感じられた トキヨは自然とその手に自分の手を添え 頬を寄せた その表情はとても柔らかでカカシは ホッ、と静かに胸を撫で下ろした・・・ ************************************** **************** 「 全く こんなにずぶ濡れになって何考えてるのよ 」 呆れた物言いをしながらもトキヨの世話を焼いているのは 上忍・夕日 紅 あの後 二人はひとまず上忍待機所・人生色々へと足を伸ばしたのだ そして そこに丁度居合わせた紅がカカシへと冷たい視線を送るのだった・・・ 「 いやー 買い物途中で偶然逢っちゃってねー デートしてたのよv 」 「 ちーがーう 」 「 何でも良いけど これでトキヨが風邪でも引いたらイルカがうるさいわよ? 」 「 それはまた大変だねー 」 しょうもない、といった紅の視線にも負けず カカシは彼女から渡されたタオルで髪を拭きながらあっけらかんに答えた 「 ・・・ん? 」 クイクイ、と服の裾を引っ張られ 紅はそれに目を向けるとトキヨが小さく手招きをしていた それに合わせて紅がそっと耳を傾ける すると・・・ 「 ・・・あのね この事イルカ先生には云わないでおいて貰えますか? 」 そう耳打ちをしたトキヨは申し訳なさそうに紅に懇願するのであった 紅はクス、と小さく笑うと 優しく微笑み返した ぱあ、とトキヨの顔にも笑みが戻ろうとした その瞬間――― 「 トキヨ!! 」 バタン!!、と勢いよく開かれた扉からはトキヨの心配の種であった 中忍・うみのイルカがものすごい形相で入ってきた そして トキヨの安否が分かると直ぐ様カカシに尋問をしだした 何故ここにトキヨがいると分かったのか、とカカシが聞くと どうやら ここにくる途中で逢った上忍・猿飛アスマが情報源らしい・・・ 息をつくまもなく 恒例(?)の口げんかが繰り広げられた 「 ちょっと あんた達!――― 」 その賑やかさに紅が一喝しようとした刹那 「 ・・・く、ふふふ・・・ 」 「「「 ? 」」」 「 あっははははは! 」 突然トキヨが笑い出した それに対し 紅のみならずカカシ、イルカ両名も思わず口論を止め トキヨに目を丸くするばかりだった 「 ははは!は〜・・・はあ、可笑しい! 」 ( なに悩んでんだろ ) 目の前で起こるいつもの光景・・・ 自分を理解してくれる人がいる 自分を案じてくれる人がいる 自分を受け止めてくれる人がいる 自分に微笑みかけてくれる人がいる こんなにたくさん微笑える こんなに温かい気持ちになれる これって 〈 幸せ 〉 なことじゃんか・・・ トキヨの中にあった壊れたココロの破片が また一つ 温かい陽だまりへと還った ・・・が。 この後 三人の忍に心配されるのは云うまでもない・・・。 ************************************** **************** あとがき こんちわ☆月夜です いやあ 遂に書いてしまいましたね〜 カカトキみたいなもの〈笑〉 本当はイルトキのはずだったのですが トキヨの台詞書いてくうちにイルカさんでは荷が重いかな〜と;; それにカカシはトキヨに振り向いてもらえていないので そろそろいいだろうと・・・。〈え〉 とにかく こんな下らない書き物を載せて頂いて&目を通していただいてありがとう ございます^^ では。 |