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I think that

it is the person kind to who can cry

because of himself

because of someone.



+--- 優しい人 ---+


「はぁっ!はぁっ!」



知らせを受けて、私はすぐに飛び出した

『 戻ってきたのは4名、一人は軽傷、一人は傷は深いが命に別状はない 』

帰ってきた…

『 残る二人は、重体で…今のところ、予測がつかない 』

頭の中で、同じ言葉がぐるぐると繰り返し流れる

誰?誰が?


まさか




木ノ葉病院に着いても、私は構わず走り続けた
後ろから、看護婦さんの声が聞こえたけど、でも、

止まれなかった


「わぁっ!!」
「…っ!!」


廊下を曲がろうとしたら、
同じく走ってきたシズネさんと、正面衝突してしまった
大丈夫?と差し伸べてくれた手を取り、私は立ち上がった


「あの、シズネさん…」
「君は……そうか、知らせを受けて来たのね」
「あの、誰が…」


訊きたかった

「誰が重傷を?」と

でも、口が震えて、その先を言うことが出来なかった
シズネさんはそれを察したのか、苦笑すると、


「安心して。奈良シカマルは軽傷よ」
「…!!」
「重傷なのは、秋道チョウジと日向ネジなんだけど…
そうだ!ツナデ様のところに行かなくちゃ!!」
「私も、行きます!」


軽傷…軽傷…
せめて、そっちであって欲しいと、あんなに願っていたのに、
心はまだ、不安でいっぱいだった







「ツナデ様っ!!」


シズネさんが止まったので、私も立ち止まった
そこは、集中治療室の前だった

そして……


「次こそは……完璧にこなしてみせます…!」


私の思考が一瞬、止まった

目の前で涙を流している、愛しい人


やっぱり


そう思った時、顔を上げたシカマルと目が合った


「あ」
「……。」


シカマルは、すぐに目を逸らし、
私の横を走り去っていった


「…シカ…」
「ミツキ」


優しい声に振り返る
シカマルの父親の、シカクさんだった


「よぅ、来てくれたのか」
「……はい」


シカクさんは、私に近づくと、
ぽんぽんと、軽く頭を叩いてくれた


「悪かったな」
「いえ」
「チョウジ君なら、助かった」
「え。」
「ネジ君とナルト君のことは、今聞いたとおりだ。つまり、全員無事だ」
「そう…ですか…」
「?…どうした、浮かない顔して」
「え?」


シカクさんは、じっと私を見た後、あぁ・と苦笑気味に


「…彼奴のことか…」


と呟くと、ぽりぽりと頭をかきながらため息を付いた
奥の方で、テマリさんも目を伏せた


「…行ってきます」
「……………ん、頼むわ」


私は、適当に挨拶をすませて、ゆっくりと歩いていった
多分…あそこだと、確信していたから


「まったく、幸せ者だな、彼奴は」
「いいや、逆だ」
「…?ツナデ様?」
「世話が焼けるねぇ、若い子は」


よいこらせっと言いながら経つと、
ツナデはその場を後にした





ミツキは、目の前の扉を開けた

そこは、病院の屋上だった

病院の屋上は、とても静かだった
時々、風に揺れる木の葉が、さわさわと音を立てた

そこに、彼はいた
金網を握りしめ、じっと遠くを見ているようだった

ミツキは、息をすぅっと吸い込み、ゆっくりと振りかぶって…


「シカさぁぁぁんっ!!」


驚いて振り返った彼の顔に



≪ べしゃっ!! ≫



「……〜〜〜〜〜〜ッ!!てっめ、何しやがっ……?」


顔に張り付いていたのは、
程良く濡れたハンカチだった


「さっさと拭く!見ないから!」


投げた後、すぐに後ろを向いたらしい
背中を向けているミツキに、
余計なお世話だっつの…とぼやきながら
真っ赤になっているであろう顔を、ごしごしと拭いた


「終わったぁ?」
「…ん」
「そっち、行ってもいい?」
「…ん」


了承を意味しているだろう声を確認してから向き返り、
ゆっくりと近づいていった
あと数歩で手が届くところで、歩みを止めた


「…お疲れ」
「…。」
「……お帰り」
「…おう」
「怪我、大丈夫?」
「…おう」
「…みんな、無事みたいだね」
「……。」
「でも…」
「…なんだよ」
「…なんでも、ない」


強い風が吹いた

通り過ぎるまで、お互いに何も喋らなかった

風が止んでから少しして、シカマルが口を開いた


「…これ…洗ってくる」
「うん」


握っていた金網を離すと、金網が僅かに軋んで音を立てた
目を合わせないようにして
シカマルは院内へ入っていった


「…。」


残されたミツキは、先程まで彼が立っていた場所についた
そっと、握られていた金網に触れてみる


「あったかい」


確かに残る温もり
ここに、彼が居たのだという証




「あーあー、じめっぽいねぇっ!」


ずかずかと、わざとらしくやってきたのは、
ツナデだった


「つっ…ツナデ様っ?!」
「まったくお前らは、若さがないねぇ!」
「えー…っと?;;;」
「……どう、思った?」
「は…?」
「あのガキが泣いたとき」
「!?」


眉間にしわを寄せたミツキを、
綺麗な琥珀色の瞳が、しっかりと映していた


「どうなんだい?」
「そう、ですね…」
「格好悪かったか?」
「いいえ」
「じゃあ…」
「優しい人だと、思いました。」
「優しい?」
「あぁ、この優しいっていうのは、
甘いとかそんなんじゃないですよ。」
「……。」
「誰かのために、自分のために泣くことが出来る、
優しい人だと思いました」


漆黒の瞳が、僅かに揺れた


「そうか…じゃあ、自分はどうなんだい?」
「じ、ぶん?」
「そ、あんただよ」
「あたし…」


明らかに動揺したミツキの肩に、
ツナデのしっかりした手がぽんと置かれた

それをきっかけに、ミツキの目から
ボロボロと大粒の涙が落ちてきた


「なんで、なんで…?」
「……あのガキと一緒じゃないか」
「へ?」
「シカマルのために、奴の部下…つまり、あんたの仲間のために、
そして、自分のために、泣いてるんじゃないか?」
「……!」
「あんたも十分、優しい人だよ」
「あたし…」


ツナデは、ふっと微笑むと、扉を見やった


「何見てるんだ。こっちに来い」
「えぇっ?!」


しばらくは何も起きなかったが、
声をかけられて観念したのか、
ギィッと音を立てて、扉が開いた

扉から出てきたのは、ハンカチを手にして、
少し戸惑った様子のシカマルだった


「ふん、立ち聞きなんて趣味が悪いねぇ」
「……。」
「シカ…さん…」
「まぁいい。あとは、お前らで解決しな」


そう言い残し、ツナデは入れ替わるように扉の奥へと消えていった



「……その…なんだ……」
「……ん…?」
「これ…使えよ」


ずいっと出されたハンカチを見て、
これ、私のじゃん・と笑いながら、それを受け取った


「悪かった」
「何が?」
「いや…、それ、俺のせいだろ」


"それ"とは、おそらく泣かせてしまったことのことだろう
思い切り眉間にしわを寄せて、困った顔をしている


「そうだねぇ…まぁ、そうかもねぇ」
「なんだよ、それ」
「……本当は、あの時に泣きたかったんだ」
「あの時?」
「シカさんが泣いたとき」
「…!?」


意味が分からないと言うような素振りをしたシカマルに苦笑しつつ、
ミツキは、ぽつりぽつりと話し始めた


「シカさんが泣いたときに、"全員が無事"だったんだって思って、
あの場で、泣きたかった」
「……。」
「みんなが生きててくれて…生きて帰ってきてくれて……」
「ミツキ」
「生きて……生きていれば、"次"があるんだから…もっと、強くなれるから…」
「……あぁ」


髪を撫でてくれたシカマルの肩に頭を凭れさせた


「生きて帰って来てくれて…ありがとう…」


シカマルは目を見開いた
が、すぐにいつもの調子で


「もう、泣くなっつーの…面倒くせぇ奴」


と、一つ愚痴を言った後、
優しく、優しく微笑み、
ふんわりと包み込むように抱きしめながら一言、付け加えた


「ありがとう」










誰かのために、

自分のために泣くことが出来る

優しい人だと思った



そんな人が近くにいてくれたら

それだけで幸せだから


もっと強くなって下さい

もっと優しくなって下さい


そして


どうか、泣きたいときに泣ける、強い人になって下さい