【 水仔 来る 】
一体何があったのか
ただ 今現在で判明している事は…
自分が何処かの噴水の真ん中で浸かっているという事。
( …なあ〜…にがどうなっているんでせうか?;; )
未だに頭の中がすっからかんで水の中で尻餅をついていると
「 大丈夫ですか? 」
ふいに頭の上から声がした
思わずビクン!と体が硬直してそっちを振り返った
その声には何故か憶えがあった
だってその声の主は―――…
「 …ロイ…? 」
知る人ぞ知る 焔の錬金術師ロイ・マスタング
「 ? 何処かで逢ったかな? 」
「 へ?……いえ… 」
期待はずれのロイの言葉に一瞬思考回路がストップした
( いつもの夢か…なんてまた酷い夢だ )
まあ、どうせ夢なんて気まぐれなもの
「 とりあえず上がりなさい 風邪を引いてしまう 」
見慣れた微笑みで俺に手を差し伸べてくれる彼に
半ば 見惚れつつその手をとった
ロイの大きな掌に俺の小さな手が丸々納まったのが
その温もりでもはっきり分って胸が鳴った
「 …アリガト/// 」
「 いや…さて、家はこの近くかな? 」
自分のコートを俺に羽織らせながら
ロイは俺に優しく問いかけてきた
俺が「いいえ」というと
ふむ、と顎に手を置き少し悩む仕草をするロイ
お決まりのその仕草に思わず頬が緩みそうになった
「 では、軍司令部へ行こう
私も戻らなければいけないのでね 」
「 はい… 」
彼の親切ぶりは知っているものの
その言葉や姿勢にはやはり違和感があった
どうしてこんなに他人行儀なのか。と
今まで見た夢では有り得ないほどに
冷たいというか、素っ気無いというか…。
少し不満な眼差しを送る俺に気づいたロイは
ふ、と口の端を持ち上げて
「 そんなに見つめられても困るんだが 」
「 な?!///ちがッ…!/// 」
取り乱す俺をクスリ、と微笑した
俺がそれに対して ム、としていると
「 そういえば まだ名前を聞いていなかったな
私はロイ・マスタング 君は? 」
「 ……トキヨ…。 」
機嫌を取る為であろう話題の転換に
俺はわざと吐き捨てるように名乗って見せた
すると、
「 トキヨ…か、いい名前だな 」
俺へと柔らかく細められた漆黒の瞳が嬉しくて
「 …ありかとう…/// 」
社交辞令と分っていても 心はもう天へとまっしぐら
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嬉しさ半分 不満半分
そんな気持ちで俺は彼の職場である司令部へと連れられた
想像以上の建物の造りに圧倒されつつも
ロイの隣を離れまいと必死に歩幅を合わせる
だが
その為に周囲の視線が痛いと言う事はあえて伏せておこう…。
施設の中を暫く歩いていると
「大佐」という声と共にお馴染の人物が現れた
「 お帰りなさい…て、何ナンパしてんすか 」
「 誰がナンパだ 」
ロイの隣にいる俺を見るなりお約束の台詞を云うのは
咥えタバコがトレードマークのジャン・ハボック少尉
「 …確かに。でもこの子がずぶ濡れじゃなかったら
どーみてもナンパっすよ なあ? 」
二人を見上げていた俺にハボックさんが
腰を折って目線を合わせ軽く話しかけてきた
「 君 年はいくつ? 」
「 おい ハボック… 」
「 えっと、18. 」
ハボックさんは物珍しげに俺を見ると
眼にかかりそうな前髪をそ、と払ってくれた
「 へえ…割と小さいなぁ ま・可愛いから関係ないか☆ 」
「 素敵なフォローどうもv 」
「 やっぱ大将と違って大人だなあ 」
「 あはは☆でも言葉と行動が違ってますよ〜? 」
カラカラといつもの調子で笑いながら
俺の頭を撫でるハボックさんに合わせて
茶目っ気のある作り笑顔と口調で応答していると…
「 ホークアイ中尉はまだ戻らないのか? 」
俺の隣から程よく棘を混じらせた声が聞こえた。
それに対し「まだっすね」と何処吹く風で返すハボックさん
それが期待外れだったらしく
彼の返答にロイは浅くため息をついた
「 仕方がないか…ハボック少尉 何か温かい物を頼む 」
「 了解 悪いな引き止めて…寒かったろ? 」
「 いいえ 大丈夫です 」
「 来たまえ 」
話も早々に俺はハボックさんに会釈してロイの背中を追った
おそらく司令室にでも行くのだろうと思っていたが
途中 他の部屋にタオルと着替えを取りに寄ってからになった
( いろんな部屋があるんだなあ… )
キョロキョロ、と辺りを見回していると何やら
見覚えのある一画に差し掛かった
「 此処で着替えるといい 」
そう云って彼が立ち止まったのは両開きの大きな扉の前
何気なく見上げるといきなりフラッシュバックが起こった
学校が終わって
友達と帰路に着く
変わり映えのない日常の光景
電車の中で面白おかしく話をして
今日も一日が終わる
そう思っていたのに…
突然の揺れと共に全てが消えた
『 光稀ぃ!! 』
「 ? …どうかしたか? 」
「 !! 」
ロイの声が聞こえて我に返ると
俺は扉の前に突っ立っていた
「 ッ………いえ… 」
一瞬呼吸が詰まったが それを気取られない様に
笑って誤魔化し 俺は静かにドアノブを回した
やっと思い出した
あの列車事故の時
俺は< 門 >を見た
< 真理の門 >
そして…
これは夢ではなく
紛れもない現実…
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あとがき
こんちわ☆お馴染の月夜です
管理人さまに続き こちらも鋼の扉的話です
とりあえず 光稀さんのとリンクしてるんで
「 なんだこれは?! 」
とはならない様にはずです…。
おそらく…ね;;
まあ いつまで続くかは不明ですが
ちらほらと書いていくつもりです^^;
では また。