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ボクが見たものは

キミが見たもの…



 < darkness >





 「 う〜……… 」


東方司令部にある部屋の一画 その中で 
ソファーにうつ伏せで突っ伏しながら唸っている少女・トキヨ

その訳とは…




 「 ………ヒマだ。 」




そう、トキヨは退屈していたのだ。


此処の司令官ロイ・マスタングに拾われ ちゃっかり生活を共にしている
その上で色々と問題が浮上してくるのではと内心ハラハラしながらも 
それなりに楽しく暮らせている

彼の優秀な副官のリザとは女性のお喋りですっかり打ち解けているし
この司令部の使用が許されてからもロイの部下である
ジャン・ハボックをはじめ ブレダ少尉、ファルマン准尉、フュリー曹長とも
相手方の積極的なふれあいで友好的になれた


しかし


 「 もぉ〜!リザさんはお休みだし みんな帰っちゃったし
   いつまで残業してるんだよ!ロイ・マスタングのばかっ!! 」


大体の人間が仕事を終え 帰路へつくというのに少女の家主は
日に日に溜めてった事務の処理に追われているのであった

この部屋から外出を禁じられている為に散歩でちょっとした暇つぶしなど
許されるはずもない 


少女の文句が空しく響く部屋の窓の外はもう夕闇が迫っていた





**************************************





あれからどれ位経っただろう…

 
 「 …ん〜…? 」


いつの間にやら浅い眠りの中へと入ってしまっていたらしい
トキヨがふと、その眼を開いた

 「 あらやだ。眠ってたんだ… 」

んー。と伸びをしてソファーに座り直そうと起き上がると
何やら硬いものが手に触れた


 「 …あ、やべ… 」


体重をかけてしまい 反射的に手をどける

普段ならすぐに時間とメールの有無を確認する為にメイン画面を覗くのだが
トキヨはそれを手にするとテーブルの上に置いてしまった

 
 「 どーして動かないんだよ…俺の携帯や〜い(涙) 」


しょぼくれた様子で携帯を見つけるトキヨ
よく見るとディスプレイの部分が真っ暗である


ロイの家で荷物を確認している時 携帯が作動していなかったので
どうしたのかと思い 電源を入れ直そうとしたのだが反応がなかった
外見や電池パックにも以上はなかったにも関わらず
何故か動いてくれない愛用の携帯に大きな溜息をついた事は云うまでもない


 「 …お前が動いてくれたら真っ先に連絡するのにねえ… 」


そう云ってトキヨはコツコツ、と人差し指で携帯を小突く 



 「 光稀… 」



ポツリ、と紡がれた言葉は友人である光稀の名

向こうの世界での大切な友人である彼女とは事故を起きる際にも
共にこの鋼の錬金術師の世界の話をしていた
いつもと何ら変わりのないその光景は今は何処か霞んでしまっている

徐々に不安が募って心配そうに携帯を見つめる


その時



 「 ?! 」


突然ディスプレイが光り 聞き慣れた着信音が流れる

トキヨは驚きながらも咄嗟にメイン画面を開き 通話ボタンを押す


 「 光稀ッ?! 」


そして その受話器の向こうからは…


 『 あ…月夜… 』


間違いなく彼女の声だった


 「 何処に居るの?!今、どうしてるの?! 」

安心したのと同時に怪我をしてないか、トラブルにあってないか…
そんな思いが先走って言葉が急いてしまう

トキヨの勢いに押されてたのか 少し遠慮気味に
こんな声が返ってきた


 『 えっと…信じて貰えないかもしんないけど
   今ハガレンの世界でデビネスに加わった…の 』


 「 …マジで云ってんの? 」


意外なその言葉に一瞬思考が止まり 目が点になるも
淡々と自分の置かれている立場を正直に伝える


 「 俺は…今 東方司令部に居る 」


 『 …本当? 』


向こうもおそらく自分と同じ心境なのだろう
暫しの間を持って言葉が返ってくる


 『 え、じゃ、じゃあ… 』

 「 そういうことになるわね 」

恐る恐る確認するような相手に頷きながら肯定する

すると…


 『 ……あっはー!そっかそっかー!
   あのね、あのね、私ね ドルチぃに逢っちゃったの! 』


普段とまるで変わらない明るいミツキの声が聞こえてきた
その嬉しそうな声にトキヨは自然と笑みが零れる

それを機に今までの不安など何処へやら。
いつの間にかいつものおしゃべりのノリになっていった


 「 そりゃ デビネスに居るんだもんね 」

 『 うんッ!すごく嬉しいの!ずっと…ずっと逢いたかったから! 』
 

この向こうでとびきりの笑顔を浮かべているのだろうと
踏んだトキヨは

 「 そりゃ宜しい事ですコト。 」

と、ひらりとかわす

すると案の定、ム、とした様に仕返しがくる


 『 何よぅ、月夜だって増田さんに逢えたんでしょ? 』

 「 増田云うな!…まぁ…ロイには逢えた…よ…/// 」


俺の反応に「あはは」と面白がっているミツキの声が聞こえる
的を射ているのだから仕方がないが…。


いつもならここぞとばがりに弾丸トークが飛び交いはじめるのだが


 『 ……つまり、月夜も… 』
 

急に勢いをなくしたミツキの声に「うん?」首を傾げると


 『 ……なんでも、ないや! 』


乾いた元気な声が返る

「ふぅん」と流そうとしたが気にかかり 聞き返そうとした

その時 


 「 ご苦労様です!マスタング大佐! 」

 「 ご苦労だった 変わった事は… 」


 ( ! マジ?!;; )


ドアの向こうから家主らしきものの会話が耳に入った


 「 あ、ごめん!帰ってきたみたいだから切る! 」

 『 ん、 ロイに宜しくーなんつって! 』

 「 もうっ!!/// じゃ、またね! 」


最後までからかわれながらも別れを告げ
ピッ!と通話終了ボタンを押し 急ぎポケットへと隠す


その数秒後 コンコン、とノック音が響き
ガチャリ、と家主によって扉が開けられる


 「 トキヨ 帰るぞ 」

 「 はーい! 」


元気よく返事をしてロイの元へと駆け寄ると同時に
ムゥ、と口を尖らせて一言。


 「 おそい。 」

 「 すまんすまん 今日のは手強いものばかりでな 」

 「 言い訳無用!早く帰ってご飯食べよう?お腹すいたぁ…(涙) 」

 「 ああ わかったよ 」


クスリ、と笑いながらロイは見張り役をしていた軍人に車を出すように云うと
二人はゆっくりと歩き始めた





**************************************





 「 う〜ん!おいしい〜vv 」


と、食後のデザートを満面の笑みで頬張るトキヨ

結局 司令部を後にした二人は自宅へは行かず 
彼の行きつけのレストランで食事を済ませることにした


 「 はは まるで子供だな 」

 「 どーせ大佐から見たらガキですよぉ〜 」

 「 ほお 自覚はあるのか、賢いな 」

窓際の向かい席でコーヒーを飲みながら少女を楽しげに眺めるロイ
先程の反省など全く感じさせないのだから困ったものだ


 「 どれ、私にも一つ。 」

 「 ええ〜。…ま、いいけどさ ん。 」

徐にティースプーンでトキヨの食べていたジェラートに手を伸ばし
小さく一掬いしてそれを口に運ぶロイ

その動作一つをとってもを絵になるのだから人間とは不思議だ

 「 …うん、確かに美味いな 」

 「 でしょ?今度は違うの頼もう…かな?…/// 」

言葉を進めていくに連れて視線をロイから外すトキヨ
よくよく考えると この行動と言動はまるでデート中のカップルの様で
なんだか気恥ずかしかった

 「 ん?どうした 」

 「 な、何でも!/// あ、ほら月!綺麗に見えるよ?/// 」

 「 …ああ 本当だな… 」

素直に月へと目を向けてくれた事にほっとする
トキヨ自身も空に浮かぶそれを見る


黒いキャンバスに浮かぶ丸い惑星


優しい黄金の光に見惚れているとデザートの器から水滴が落ちてきた
その冷たさにはっとして視線をテーブルに戻すと 
何故だろうか 目の前の男へとそのまま視線を運んでしまった


 「 … 」


月光に照らされる漆黒の彼

不思議とそこだけ時間が止まった様だった



そんなトキヨの脳裏を過ぎったのがミツキのあの言葉



  『 つまり、月夜も… 』 


 
あの時 彼女が何を云おうとしたのか…

何となく見当はついた

それはおそらく…



あの < 扉 >



アレガ 世界ノ真実…?





 「 …ッ… 」

 
 「 …トキヨ どうした? 」


辛そうに顔を歪める少女に気が付き ロイは心配そうに声をかける

 
 「 …大丈夫、なんともないよ…? 」


トキヨはそんな彼に精一杯の笑顔で応えた

でも それは何処か淋しげで儚げで普段の少女のものではなったが…


 「 …なら…いいんだ… 」


ロイはそれ以上探ろうとはしなかった


いや

今はまだ 探ってはいけないのだ、と何かが彼を戒めた





**************************************





あれから二人は徒歩で帰宅し 静かに床へとついた

だが トキヨはベッドの中で眠れずに居た



一つは友人が生きていた事が嬉しくて

もう一つは



 「 あれが…本当に< 真理 >なのかな…? 」



大きな大きな扉の中に見たあの光景


もしも あれが本当に真理なのだとすれば




俺は何を< 代価 >に見たのだろう…





 「 ……やめよ…俺は錬金術師じゃないもんね… 」




そうして自分に言聞かせると もぞもぞと毛布に包まり


そっと瞼を閉じた 










重い音と共に開かれた扉の先



浮かび上がるのは



闇  暗闇  真っ暗な暗闇



それが僕の見たもの



それが君が見たもの