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知るべきなのか

君が誰なのかを…




 < WHO >






今朝は朝から雲行きが怪しく 雨がちらほらと降ってきた



ザアアアアアアアアアアアアアアァ…



…と、思ったらいきなりのどしゃ降り。



こんな天気を喜ぶ人間なんて一体何処に存在するのだろうか…?

とくに


 「 よぉ、ロイ!そっちは生憎の天気らしいが…生きてっか? 」


 「 〜っやかましい!下らん事を云ってないでさっさと報告しろ!! 」


焔の銘を持つ彼は。


 「 そう怒 るなよ こっちは心配してやってんだからよ 」

明るい大らかなその口調は本 気なのか、ふざけているのか図りかねる
そんな怪しい友人の言葉を電話越しから聞いている彼は毎度の如く
練成陣が描かれている発火布で出来た右手の手袋をはめ ご立腹である

 「 それ以上 無駄口を叩くなら消し炭にするぞ 」

 「 お〜怖いねぇ。じゃあそろそろ本 題に入るか 」

 「 お前はいつも順番が逆だ 」

 「 まぁそーゆーなよ。こちとら在り過ぎる資料の中から情報を漁ってるんだ 」

 「 それで収穫は? 」

 「 めぼ しいものは何も…スクールの名簿やら色々と調べたが駄目 だったよ 」
 
 「 入国者リストもあたったか? 」

 「 ああ、それも確認した 間違いない 」

 「 …そうか、解った 」

 「 ロイ 」

 「 仕方ないさ 時間切れだ 」

冷たさを帯びた声と共鳴する様にもの凄い轟音が辺りに響く


そして同時に一瞬にして光が失われた


 「 !? 」


光源を見上げるがいきなりの事に目 が慣れず 全てが闇に包まれた



 「 …停電か 」 





**************************************





 「 嗚呼…マジで停電なんて最悪;; 」


打って変わって此方も真っ暗な闇の中を少女が独り。


いつもの様に家主の迎えを自分にはあまり馴染みの無い横文字だらけの本 を
眺めながら待っていたのだが…

突然の停電によってそれも叶わなくなった

別段 暗闇に対してはそれ程の恐怖は持たない少女は取り乱す事も無く
ただ電気が復旧するのをもう愛用となったソファーでじっと待っている


 「 …もお〜…早くしてよぉ… 」


…………はずだった。


口が悪く男っぽいトキヨは普段見せないある弱点があったのだ

それは…


 『 フフ… 』


 「 〜〜っ!!!?;;; 」


突如 耳に入った奇怪な声にびくん!と身体を強張らせ ソファーに縮こまるトキヨ


そう トキヨの弱点はいわゆるホラーと呼ばれる部類のもの。


昔から何故か苦手で付き合いなどで見る時は必ず誰かにぴったりとくっ付いて
オッカナビックリしながら時が過ぎるのを待っていた

一時期 それを克服し 映画やビデオもどんと来い!となったが
ここ数年 また恐怖がぶり返してこの様である。


 ( 今聞こえたのは風鳴りだ!単なる風だぁー!!;; )

恐怖を振り払う為に自分に必死で言聞かせるもを
一度 恐怖を感じるとそれがじわじわとコワイモノに変わっていく

人間とは悲しい生き物だ…。



 「 …お願いだから…何でもいいから誰か来てよぉ〜…;;;(涙) 」





**************************************





…数分後



 「 ふ、不可抗力だ!人間怖いものは怖い!! 」


ついにじっとしていられず まだ仕事中であろう家主の元へ暗い廊下を進む

「怖いくない怖くない」と、呪文の様に繰り返しながら壁伝いに向かう
丁度 曲がり角に差し掛かるとチカチカ、と天井から光が指した

トキヨはほっと胸を撫で下ろすと踏み出し損ねていた足を地につける

すると 死角なっていた右肩に何かが触れた


 「 きゃあっ!! 」


思わずその影をあたった右腕で力一杯に振り払った瞬間 
カシャン!と硝子が砕ける音が木霊した
その意外な音に恐る恐る瞑っていた目 を開けると…


 「 …びっくりした…;;大丈夫ですか? 」

 「 …ぁ…伍長さん… 」


灯りを取りに行くといっていた世話役、兼見張り役の女性がいた

 「 御免なさいね 驚かせて…怪我はないですか? 」

差し出された手を取る事も忘れ トキヨは縋る様に彼女に泣きついた

 「 …ぅ…、っ 」

 「 大丈夫ですから泣かないでください 」

突然の事に伍長は些か動揺しつつも背中を摩り 少女をあやす


暫くすると少女はそっと離れ 溢れた涙を拭いながら
はにかむ様に微笑んだ

 「 …御免なさい 」

 「 いいえ 怖かったんだもの仕方ないわ 」

 「 えへへ……///
   ………って笑ってる場合じゃない!! 」

はっ!と、思い出した様に先程の音の元を探すと…

そこには粉々に砕けたランプの破片が散乱していた


 ( …やっべー……;;; )


血の気がサァ、と引いていくのが解った


 「 御免なさい!御免なさい!!;; 」

思いっきり逃げ腰で手を合わせ 頭を下げるトキヨ

それを見てクスクスと伍長は微笑する

 「 気にしないで 古い型だし、ヒビも入ってたから 」

 「 あー、いいです!やりますから! 」

破片を拾う為に屈もうとした彼女に待ったをかけ 自分は作業する為に膝を折る

いざ 破片を拾おうとそれらを手を伸ばした刹那―――



パシン!!



 「 !? 」

独特の音を立てながら眩い程の光が溢れた


そして 光が薄れた次の瞬間には壊れたはずのランプが綺麗に元通りになっていた


 「 トキヨさん…今の…;; 」

 「 … 」


突然の事に目 をパチクリさせている伍長
そんな彼女とは裏腹に少女は黙ってじっと自分の掌を見つめている


 ( アレを見たから…錬金術の基本 的な事を知っているから…か? )


どうやら冷静に状況を整理しているらしい

…が。



 ( …なーんか…すごいぞ自分。 )


割と楽天的だった。



そんな折… 


 「 …トキヨ 」


 「 ぁ… 」


一番見られてはマズイであろう彼 ロイ・マスタングがランプを片手に佇んでいた



 「 あ、あの大佐… 」

 「 伍長 すまないがコレを私のオフィスに頼む 
   それが済んだら上がってくれて構わない ご苦労だった 」

 「 え、あ、はい… 」

まだ少し混乱気味の彼女に有無を云わさず 手荷物を持たせる

ロイは未だに自分を見上げ 立ち上がろうとしないトキヨを起こさせ
「来なさい」と、一言残して少女のいるべき部屋へと独り向かった

彼の様子にトキヨは何も云えず 彼の背中を追った 





**************************************




今し方 後にした部屋へと通され 黙っていつもの定位置に腰掛けるトキヨ

そして その正面にロイが腰を下ろす

何も云わずに自分を貫く漆黒からは感情が窺えず つ、と視線を泳がせるが…

 
 「 先程の光 あれは練成反応によるもので間違いないな? 」

漆黒の彼はそれを許さない様に話しかけてきた


トキヨはそれに小さく頷く

その様子にロイはふぅ、と小さく息をつき 改めて問い質す


 「 …回りくどく云うのはよそう、単刀直入に聞く 君は何者だ 」


一番 聞きたくない言葉が彼の口から発せられた…


 「 君の捜 索に一週間かけたが未だに進展は無い 
   もし、このままいけば不穏分子と見做され 逮捕、尋問を受ける 
   勿論 私の息の掛かっていない者達を除いてだ… 」


国軍大佐として地位にある彼

この司令部で司令官という椅子にはあるが まだその力には限界がある


 「 トキヨ 」

 「 … 」


 ( 知らぬ存ぜぬで通るのもこれまでか… )


トキヨはこれ以上の嘘は自分の為にも、彼の為にもならないと覚悟を決めた


そして…



 「 何者って云われても俺が聞きたいくらいだからね… 」



ソファーの背に寄りかかり 何とも云えない表情でゆっくりと言葉にする少女

ロイはその言葉の意味を汲み取れず 端整な眉を寄せた
トキヨがそれに気付くと「ごめんごめん」と、苦笑しつつ 背を起こした

 「 云い方が拙かった。ん〜、まず記憶が無いのはデタラメ それは謝る
   でも 最初に云った様にどうして此処にいるかは本 当に解らないし
   俺も知りたいって思ってる… 」


 「 … 」


先程とは違い 真っ直ぐに向けられる瞳

その彩には戸惑いも誤魔化しも一切感じられない


ロイはその視線を外さないまま 少女に返す言葉を捜 した

だが 


 「 …なんて本 音を並べても建前は違う 
   そうでしょ? ロイ・マスタング 」


ふいに少女が瞬き 次に向けてきたのは自嘲とも取れる不敵な笑み


ロイはそれに短く「ああ」と、答えて腰を上げ 出入り口へと向かう

先程の様に声を掛けられなくても それが「来い」という事だと
少女にはそれとなく解り 黙ってついていく 





**************************************




雨音と風音に混じる二人の足音がピタリ、と止んだのはロイのオフィス


実に一週間ぶりの訪問だ、と頭の隅で考えながら通されるまま 素直に入る

少女はロイの後について真正面に構える来客用のソファーを素通りし 
彼のデスクの前に立つ

伍長が来たらしくデスクには彼が渡したランプが置いてある
ロイは処理していた書類と運ばれたランプをデスクの端に寄せると
何やら数枚の紙を取り出し それらを少女に差し出した


 「 …? 大佐? 」

意味が解らず 首を傾げる少女は目 の前の男に当然の如く疑問符を投げる


すると


 「 それが個人データだ それを見本 に好きに書きなさい
   そうしたら私が後で調整をする 」

 「 …。 」


彼は今なんと云ったのだろう…? 

少女はいきなり事にただ眼を丸くし ポカンとしている


 「 なんなら 私が変わりに書いても…? 」

 「 いいえ。出来る限り自分で書く! 」

自分の様子に彼があの厭味な笑みを浮かべている事にハッ!として我に返る


 「 …つーか、これって犯罪でしょ。 」

 「 嘘も方便というだろう? 」

 「 ……ジジクサ。 」

 「 何か云ったか? 」

 「 いーえ。 」


と、そんなやり取りをしている場合ではない。


 「 信じてくれるの?俺の事… 」

 「 いや…だが、有能な錬金術師を見す見す逃す程 私は愚かではないよ 」

真っ直ぐな少女の言葉を否定しつつ ロイはゆっくりと椅子に腰掛ける

少女はつ、と視線を外し 書類をもう一度見直すと…


 「 …ありがとう 」

小さく思いを言葉にした


 「 ほぉ…駒になれ、という人間に礼を云うのか? 」

 「 社交辞令。でも恩を仇で返す程 馬鹿じゃないし それに… 」

 「 それに? 」

お互いに皮肉を返し合っていたが 少女の思わせぶりな言葉に男が輪唱し
その先の答えを求めた


そして…



 「 俺もアンタを利用する 」



ロイは一瞬 呆気に取られるもすぐにその唇に弧を描いた


 「 云ってくれる…いいだろう、だが<互角>では有り得ない 」

 「 今はね 」


まるで引け目 を感じさせないしっかりとした少女の様子にロイは
出逢った時のあの眼を重ねた



危うい彩を滲ませたソレは あの時よりも一層興味を惹かれた…






 ( いい眼だ… )












 「 あ、ところで俺 この国の文字って少ししか理解できてないから
   翻訳の方 宜しくお願いしま〜す☆ 」

 「 …;; 」