それは偶然なのか…それとも…




*---Unthinkable---*




「セントラルシティ〜セントラルシティ〜」


目的地に到着した列車

流れるように乗降する人々
その流れに乗り、グリードとミツキも出口へと向かった

途中、憲兵に何か尋ねられそうになり、ミツキが笑顔で応対した


「つまり、お兄さんと二人で来たんだね」

「はい!兄の仕事の資料を探しにこちらまで来ました!」

「お嬢ちゃんも一緒にかい?大変だね〜」

「そんな〜!兄を助けるのが、妹の私の仕事ですからvvv」


いけしゃあしゃあと嘘を並び立てるミツキに、
グリードは、感心しつつ、面白がって見ていた
「それでは」と会釈して、さっさと駅を後にした


「く…ククッ……!」

「グリ、笑いすぎ」

「いや…おめぇがこんな奴だとは…ククッ…!」

「何其れ〜!酷いわ、お兄ちゃんったら!!」

「俺がおめぇの兄貴ね…クックッ…そういうことにしておこうな…」

「んもぅ、馬鹿兄貴〜ぃ!」


プイッと拗ねたミツキがまた面白くて、
グリードは笑いをこらえるのに必死になっている


「さてと、この先の…あそこに宿泊手続きとったから、
 用事が終わったらあそこに来てね、忘れないでね!」

「へいへい、それじゃ、ちょっくら行って来るわ」

「行ってらっしゃい!私はチェックインしてるからね〜!」

「おう!」

「ちなみに、部屋は別々だからね〜!」

「ありゃ、そいつぁ残念だ(笑)」


そう冗談を言うと、グリードはあっという間にいなくなってしまった


「やれやれ…チェックインしますかねぇ…」


ミツキは鞄を持ち直すと、宿泊先のホテルの入り口に入っていった




*-*-*-*-*-*-*-*-*-*-*-*-*-*-*-*-*-*-*-*-*-*-*-*-*-*-*-*-*-*-*-*-*-*-*-*-*




「しかし、暇だなぁ……」


ミツキは、ベットの上でごろごろしながらぼやいた


「何もすることがないと暇だわ〜どうしよ〜」


ごろごろごろごろ。

ベットの上を縦横無尽に転げ回るミツキは今にも落ちそうで、
端から見ているとかなり危なっかしい


「なんか事件でも起きないかなぁ…湯煙混浴温泉殺人事件とかさ〜(謎)」


『きゃぁぁぁ!!』


「?!」


突然の女の悲鳴に、がばっと起きあがる


(絹を裂くよな女の悲鳴!!ま、まさか本当に殺人事件ー?!)


急いで窓を開けると、
丁度ホテルの真ん前で、金髪の女の子が、何人かの男に絡まれていた


「げ…あの子やばいじゃん…!」


ミツキは、階段を一気に駆け下り、ホテルを出ると、
その女の子は、男の一人に腕を掴まれ、必死に抵抗している


「や、やめて下さい〜!」

「てめぇ、泣けばすむと思ってんのか?あぁ?!」

「ふぇ〜!」


「おい、やめなよ!!」


ミツキは、叫んでから後悔した


(あちゃー…本性丸出し…つか、余計なことに首突っ込んじゃったなぁ;;;)


「あん?なんだ、この女」

「(こうなりゃヤケだ〜!)やめろって言ってるんだよ!
 なんなんだ、あんたら!女の子一人相手に3人掛かりですか?
 まぁなんとも情けないったらありゃしねぇ!!」

「なんだと?!」

「聞こえなかったのか?女々しいんだよ!!
 女みたいに徒党組みやがって…男の恥さらし!!」

「この野郎!!!」


怒った男の一人が、ミツキに襲いかかる


(理解…分解…再構築…ッ!)


ミツキは、両手を合わせ、バッ!と地に押しつけた
途端に、錬成反応が起こり、地面があっというまに形を変え、
ズゴンッ!と大きな音を立てて、男めがけて打ち付けられた


「がはっ!!」

「お、おい!大丈夫か?!」

「れ、錬金術師か?!」

「女の子相手に殴りかかるか、普通……最っ低…」

「ふ、ふざけんじゃねぇ〜!!」


と、別の男がさらに殴りかかろうとした…が、


「そこまでだ!!」


「やべっ!!」

「行くぞ!!」


騒ぎを聞きつけた憲兵の姿を見た男達は、一目散にその場を後にした
その憲兵も、彼女達の無事を確認すると、男達を追って行った

フーッと溜息をつくと、ミツキは襲われていた少女に目を向けた


「大丈夫だった?痛くない?」

「あ、ありがとうございます!!」


ぺこりと頭を下げた少女を見て、ミツキは目を丸くした


「……あぁ〜〜〜〜〜〜!!!」

「え?!な、なんでしょう?」

「あ〜〜…あ、いや…ご、ごめんなさいね;;;」


彼女が驚くのも無理はなかった
彼女の目の前にいる少女、それは……


「助けてくれてありがとうございます!」

(ん?てことは……)

「あの、錬金術師さんなんですか?」

「え?いや…その…」

「すっご〜〜〜〜いっ!!是非是非、もう一回見せて下さい!お願いします!!」


そう、彼女は錬金術師を夢見る、錬金術マニアだったのである…





*-*-*-*-*-*-*-*-*-*-*-*-*-*-*-*-*-*-*-*-*-*-*-*-*-*-*-*-*-*-*-*-*-*-*-*-*




「がっはっはっはっはぁ!!」

「…笑いすぎ…」


二人がいるのは、ホテルのグリードの部屋

ホテルに戻ってきたグリードに、昼間の出来事を話すと、
グリードは大声を上げて笑い始めた


「がっはっは!はぁ…いや、しかし…おめぇが錬金術師とはな」

「違います〜錬金術がちょこっと使えるだけで、術師じゃないも〜ん」

「で?どうしたんだ、その子は」

「あ、それなんだけど…御礼がしたいからって、
 明日夕食を一緒にどうかって言ってきてね…どうしようか悩んでる〜」

「行きゃぁいいじゃねぇか」

「でも…」

「俺は、別に良いと思うぜ?おめぇがちゃーんと帰ってこられんならな」

「まぁ…送り迎えはあっちがしてくれるみたいですけどぉ〜」


じろっとグリードを見る
その視線に気が付いたグリードは、ニッと笑った


「ん〜?そんなに俺が心配か?」

「そりゃそうでしょ!みんなの代わりに私が来てる訳だし、
 何かあったら責任問題だよ、大失態だよ、追い出されちゃうよ!」

「何もそこまで追いつめんでも…(笑)
 ま、俺はそんな簡単にしっぽは出さねぇし、死なねぇから安心しな」

「はぁ…それなら…お言葉に甘えて行ってこようかな…」

「あ、タッパー持ってけよ、夕飯少しテイクアウトしてこいや」

「グリ!」

「がっはっは!冗談冗談!」


そういって馬鹿笑いするグリードに、ミツキは深い溜息をついたのだった




*-*-*-*-*-*-*-*-*-*-*-*-*-*-*-*-*-*-*-*-*-*-*-*-*-*-*-*-*-*-*-*-*-*-*-*-*




「あぁ…疲れた…」


ミツキは、濡れた髪をタオルで拭きながら、ベットに腰掛けた

「どうせならこっちで一緒に寝ようぜ〜」とか言うグリードに
「お兄ちゃんのスケベ〜!」と冗談交じりに一喝して、
自分の部屋に戻り、シャワーを浴びてじっくりと旅の疲れを癒してきた


「だけど…驚いたな…この世界にリズがいるなんて…」


そう、昼間出逢った少女こそ、ミツキが作ったオリジナルキャラクター
『リズワーナ=フィル=アームストロング』もとい『リズ』だったのだ


「原作ベースで話が進んでいると思ったけど…そんなことないのかな…」


よく考えると、自分たちの状況や『扉』の設定はアニメに近い
どうやら、原作が元になってはいるものの、
アニメや自分たちの設定も加わっているらしく、
漫画とは多少の違いや誤差があるみたいだ

…そもそも、自分たちがこの世界に落とされた時点で
"未来"が変わったのかもしれない


「なんにせよ…ちょっと嬉しかったな…」


自分が創造したキャラクターが、この世界で生きている
それだけで、どこか心が満たされていく気がする

目の前で微笑んだ少女

その笑顔を生み出したのは自分なんだなって思うと、
その子が愛おしくなっていく


「明日、楽しみだなぁ…」


明日になれば、またリズに逢える
そう思うと、楽しみでたまらなくなってくる


「ん?てことは…あれかな…もしかしたら……!!」


ふと過ぎった"予想"に、思わず旅行バックを漁る
が、しばらくして、動きが止まってしまった


「ケータイ……忘れた……」


自分の失態に思わず青い筋と人魂が飛び交ったが、


(ま、帰ってから連絡すればいいか☆)


と、相変わらずのお気楽思考で、
その日を無事に終了させたのだった