それは偶然なのか…それとも…
*---Unthinkable---*
「セントラルシティ〜セントラルシティ〜」
目的地に到着した列車
流れるように乗降する人々
その流れに乗り、グリードとミツキも出口へと向かった
途中、憲兵に何か尋ねられそうになり、ミツキが笑顔で応対した
「つまり、お兄さんと二人で来たんだね」
「はい!兄の仕事の資料を探しにこちらまで来ました!」
「お嬢ちゃんも一緒にかい?大変だね〜」
「そんな〜!兄を助けるのが、妹の私の仕事ですからvvv」
いけしゃあしゃあと嘘を並び立てるミツキに、
グリードは、感心しつつ、面白がって見ていた
「それでは」と会釈して、さっさと駅を後にした
「く…ククッ……!」
「グリ、笑いすぎ」
「いや…おめぇがこんな奴だとは…ククッ…!」
「何其れ〜!酷いわ、お兄ちゃんったら!!」
「俺がおめぇの兄貴ね…クックッ…そういうことにしておこうな…」
「んもぅ、馬鹿兄貴〜ぃ!」
プイッと拗ねたミツキがまた面白くて、
グリードは笑いをこらえるのに必死になっている
「さてと、この先の…あそこに宿泊手続きとったから、
用事が終わったらあそこに来てね、忘れないでね!」
「へいへい、それじゃ、ちょっくら行って来るわ」
「行ってらっしゃい!私はチェックインしてるからね〜!」
「おう!」
「ちなみに、部屋は別々だからね〜!」
「ありゃ、そいつぁ残念だ(笑)」
そう冗談を言うと、グリードはあっという間にいなくなってしまった
「やれやれ…チェックインしますかねぇ…」
ミツキは鞄を持ち直すと、宿泊先のホテルの入り口に入っていった
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「しかし、暇だなぁ……」
ミツキは、ベットの上でごろごろしながらぼやいた
「何もすることがないと暇だわ〜どうしよ〜」
ごろごろごろごろ。
ベットの上を縦横無尽に転げ回るミツキは今にも落ちそうで、
端から見ているとかなり危なっかしい
「なんか事件でも起きないかなぁ…湯煙混浴温泉殺人事件とかさ〜(謎)」
『きゃぁぁぁ!!』
「?!」
突然の女の悲鳴に、がばっと起きあがる
(絹を裂くよな女の悲鳴!!ま、まさか本当に殺人事件ー?!)
急いで窓を開けると、
丁度ホテルの真ん前で、金髪の女の子が、何人かの男に絡まれていた
「げ…あの子やばいじゃん…!」
ミツキは、階段を一気に駆け下り、ホテルを出ると、
その女の子は、男の一人に腕を掴まれ、必死に抵抗している
「や、やめて下さい〜!」
「てめぇ、泣けばすむと思ってんのか?あぁ?!」
「ふぇ〜!」
「おい、やめなよ!!」
ミツキは、叫んでから後悔した
(あちゃー…本性丸出し…つか、余計なことに首突っ込んじゃったなぁ;;;)
「あん?なんだ、この女」
「(こうなりゃヤケだ〜!)やめろって言ってるんだよ!
なんなんだ、あんたら!女の子一人相手に3人掛かりですか?
まぁなんとも情けないったらありゃしねぇ!!」
「なんだと?!」
「聞こえなかったのか?女々しいんだよ!!
女みたいに徒党組みやがって…男の恥さらし!!」
「この野郎!!!」
怒った男の一人が、ミツキに襲いかかる
(理解…分解…再構築…ッ!)
ミツキは、両手を合わせ、バッ!と地に押しつけた
途端に、錬成反応が起こり、地面があっというまに形を変え、
ズゴンッ!と大きな音を立てて、男めがけて打ち付けられた
「がはっ!!」
「お、おい!大丈夫か?!」
「れ、錬金術師か?!」
「女の子相手に殴りかかるか、普通……最っ低…」
「ふ、ふざけんじゃねぇ〜!!」
と、別の男がさらに殴りかかろうとした…が、
「そこまでだ!!」
「やべっ!!」
「行くぞ!!」
騒ぎを聞きつけた憲兵の姿を見た男達は、一目散にその場を後にした
その憲兵も、彼女達の無事を確認すると、男達を追って行った
フーッと溜息をつくと、ミツキは襲われていた少女に目を向けた
「大丈夫だった?痛くない?」
「あ、ありがとうございます!!」
ぺこりと頭を下げた少女を見て、ミツキは目を丸くした
「……あぁ〜〜〜〜〜〜!!!」
「え?!な、なんでしょう?」
「あ〜〜…あ、いや…ご、ごめんなさいね;;;」
彼女が驚くのも無理はなかった
彼女の目の前にいる少女、それは……
「助けてくれてありがとうございます!」
(ん?てことは……)
「あの、錬金術師さんなんですか?」
「え?いや…その…」
「すっご〜〜〜〜いっ!!是非是非、もう一回見せて下さい!お願いします!!」
そう、彼女は錬金術師を夢見る、錬金術マニアだったのである…
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「がっはっはっはっはぁ!!」
「…笑いすぎ…」
二人がいるのは、ホテルのグリードの部屋
ホテルに戻ってきたグリードに、昼間の出来事を話すと、
グリードは大声を上げて笑い始めた
「がっはっは!はぁ…いや、しかし…おめぇが錬金術師とはな」
「違います〜錬金術がちょこっと使えるだけで、術師じゃないも〜ん」
「で?どうしたんだ、その子は」
「あ、それなんだけど…御礼がしたいからって、
明日夕食を一緒にどうかって言ってきてね…どうしようか悩んでる〜」
「行きゃぁいいじゃねぇか」
「でも…」
「俺は、別に良いと思うぜ?おめぇがちゃーんと帰ってこられんならな」
「まぁ…送り迎えはあっちがしてくれるみたいですけどぉ〜」
じろっとグリードを見る
その視線に気が付いたグリードは、ニッと笑った
「ん〜?そんなに俺が心配か?」
「そりゃそうでしょ!みんなの代わりに私が来てる訳だし、
何かあったら責任問題だよ、大失態だよ、追い出されちゃうよ!」
「何もそこまで追いつめんでも…(笑)
ま、俺はそんな簡単にしっぽは出さねぇし、死なねぇから安心しな」
「はぁ…それなら…お言葉に甘えて行ってこようかな…」
「あ、タッパー持ってけよ、夕飯少しテイクアウトしてこいや」
「グリ!」
「がっはっは!冗談冗談!」
そういって馬鹿笑いするグリードに、ミツキは深い溜息をついたのだった
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「あぁ…疲れた…」
ミツキは、濡れた髪をタオルで拭きながら、ベットに腰掛けた
「どうせならこっちで一緒に寝ようぜ〜」とか言うグリードに
「お兄ちゃんのスケベ〜!」と冗談交じりに一喝して、
自分の部屋に戻り、シャワーを浴びてじっくりと旅の疲れを癒してきた
「だけど…驚いたな…この世界にリズがいるなんて…」
そう、昼間出逢った少女こそ、ミツキが作ったオリジナルキャラクター
『リズワーナ=フィル=アームストロング』もとい『リズ』だったのだ
「原作ベースで話が進んでいると思ったけど…そんなことないのかな…」
よく考えると、自分たちの状況や『扉』の設定はアニメに近い
どうやら、原作が元になってはいるものの、
アニメや自分たちの設定も加わっているらしく、
漫画とは多少の違いや誤差があるみたいだ
…そもそも、自分たちがこの世界に落とされた時点で
"未来"が変わったのかもしれない
「なんにせよ…ちょっと嬉しかったな…」
自分が創造したキャラクターが、この世界で生きている
それだけで、どこか心が満たされていく気がする
目の前で微笑んだ少女
その笑顔を生み出したのは自分なんだなって思うと、
その子が愛おしくなっていく
「明日、楽しみだなぁ…」
明日になれば、またリズに逢える
そう思うと、楽しみでたまらなくなってくる
「ん?てことは…あれかな…もしかしたら……!!」
ふと過ぎった"予想"に、思わず旅行バックを漁る
が、しばらくして、動きが止まってしまった
「ケータイ……忘れた……」
自分の失態に思わず青い筋と人魂が飛び交ったが、
(ま、帰ってから連絡すればいいか☆)
と、相変わらずのお気楽思考で、
その日を無事に終了させたのだった