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本当に逢いたかったのは?



*--- To the pool of love ---*




「む〜」


キョロキョロと、部屋から顔だけを出し、
辺りの様子をうかがうミツキ
誰も居ないことを確認すると、
ドアを閉め、ベットにダイブする

そして、にまーっと笑いながら携帯を取り出す


あれから、何度か"彼奴"に電話をかけている
この世界のモノではないせいか、
電池も減らないし、アンテナも常に3本立ち
お陰で、唯一の理解者と語らうことが出来ているのだ


「〜♪」


鼻歌を歌いながら、
いつものように履歴から"彼奴"の名前を探し出す

耳元で響くコール音も、新鮮だ


『はいは〜い』

「とき〜!元気してる?ちゃんとご飯食べてる?増田と仲良くやってる?」

『質問多い!つぅか最後のはなんなんだ!!』


あぁ、この毒舌ツッコミも新鮮だぁ〜い☆


「ではでは…早速ですが、惚気タ〜イム!」

『早いな』

「だぁって〜、わんこ可愛くて可愛くてvvv」

『はいはいはいはい』


きゃぁ〜vvと転げ回るミツキ





この世界に落とされる直前も、
二人は似たような話をしていた


月夜と光稀は、同じ漫画好き


電車の中で座って話すことも
休み時間に笑って話すことも
授業中にこっそり話すことも
メールや電話での話題も

全部全っっっ部同じ話題


そして、彼女たちの好きな漫画の中で
1位2位を争っていたのが、
彼女たちが落とされたこの世界
"鋼の錬金術師"だったのだ


「今洗濯物取り込んで終わったんだけどね、
 今日、初めてお仕事するの〜!なんか緊張する〜!」

『ふぅん…いいわね
 俺なんか籠の中の鳥ですからね〜』

「あら〜増田ってば…vv」

『変な意味に捉えんな、馬鹿っ!!切るぞ!?』

「あっはっは〜☆ごめんごめん!切んないで!」


きゃぁきゃぁと楽しげに話すミツキ
やはり、同じ境遇にあっている友人と話すのは楽しいらしい


『はぁ…で?あんた早速体当たりしたの?』

「何が?」

『何がって…あんたいつも
 <わんこに逢えたら彼女になる>つってたじゃないの』

「……あぁ…」


トキヨの言葉に苦笑する


「なんか、それが出来たら苦労しないっていうか…
 ごめんなさい、無理です」

『はぁ〜ん…あんたって、
 本人前にして怖じ気づくタイプなんだ〜』

「はい、そうなんです…」

『…そっか〜、ま、頑張んなさいな』

「えっひひ…」

『それと…お犬様と仲良くなるのは良いけど、
 あんたはそれでいいの?あんたには"あの人"がいるじゃない?』

「あ、それは言わないで……」

『は〜いはい…そろそろ本当に切るね、帰ってくる時間だから』

「はぁい」


プツッと通話を終わらせる

は〜あ、と溜息をつきながら、ごろんと仰向けになる


「本ッ当……駄目だなぁ…」

「何がだ?」

「………うおぉぉっ!!?」


突然目の前に現れた影に、驚いてガバッと起きあがる


「よっ!」

「ぐ、グリ?!なんで人の部屋に入ってんの!?」

「がっはっは!いい反応だ!」


ひょこっとのぞき込んでいた犯人は、
この酒場の主のグリード
ポケットに両手を突っ込んで大笑いする彼に、
最早ツッコミの声も届いていないようだ


「せめてドアノックくらいしようよ!
 仮にも純情可憐な乙女(?)の部屋なんスよ?!」

「自分で言うか、それを(笑)
 まぁいい、そろそろ店に顔出しに来い」

「え?もうそんな時間…?」

「いや、今日もあんまりいい女が居なくてよぉ
 少しでも花があったほうが楽しいだろうよ?」

「あっはっは〜、グリらしい〜!」

「ほら、行くぞ」

「はぁい」


もう勝手に部屋に入ってきたことは忘却の彼方らしい
ミツキも深く追求するのが面倒になったので、
とりあえず、差し出された手を取り、酒場へと向かった

酒場に向かう途中、グリードが

「そういえば、あれから怖い夢は見てねぇのか?ん?」

と言ってきた

ミツキ本人はすっかり忘れていたのに、
思い出して顔を真っ赤にした


「み…見てないですっ!つか忘れてよ!」

「いやぁ…あれはなかなか忘れられねぇだろ」

「お願いだから、絶対内緒だからねッ!絶対だよッ!」

「ん、わーってるよ」


ニッと意地悪な笑みを浮かべると、耳元でそっと囁いた

「俺とお前の、二人だけの秘密な」

「〜〜〜〜〜ッ!!?////…って、いったぁぁぁ!!」


さらに顔を赤くしながらすごい勢いで後ろに下がり、
ドゴンッ!と大きな音を立てて壁に激突
後頭部を強打したミツキを見て、
グリードは思い切り吹き出した


「…プッ…がっはっはぁ!!」

「ひ、酷い…酷いわ…っ!」

「あー、面白ぇ面白ぇ!行くぞ、ミツキ」

「うぬぅ……(怒)」


後頭部をさすりながら、賢明についていくミツキ

…ああやって女を口説き落としてんだろうなー
なんて思いながら酒場への階段を上がっていった




*-*-*-*-*-*-*-*-*-*-*-*-*-*-*-*-*-*-*-*-*-*-*-*-*-*-*-*-*-*-*-*-*-*-*-*-*





「さぁて、どうしたもんか…」


酒場に着いたものの
未だに歌う曲を迷っているミツキ


(そもそも酒場なんて入ったことないから曲の雰囲気わかんねぇよ;;)


カウンターに肘をつき、
はぁ〜…と、大きく溜息をつく

隣に座っていたグリードが、
ミツキの頭をくしゃくしゃと撫でた


「ミぃツキ、どうした?」

「グリ〜、何歌えばいいの〜?」

「なんでもいいっつったろ」

「それが一番困るんだよなぁ」


むっす〜と頬を膨らませるミツキ


「あ、ミツキ」

「ん〜?あ、ドルチぃ!」


奥から入ってきたドルチェットを見つけた途端
ふくれっ面が笑顔に変わった

勿論、グリードがそれを見逃している訳がないわけで
逆にこちらがしかめっ面に変わった


「なんか悩んでたみたいだけど、どうした?」

「んとね、何歌えばいいのかなって…」

「あぁ…今日からだっけか」

「ねぇ、どんなのが良いと思う?」

「どんなのって聞かれても…俺はあんまり詳しくねぇしなぁ…」

「そっかぁ…」


またも、頭を抱え悩むミツキ


「……じゃあミツキよぉ、誰かのために歌えや」


グリードの声に、パッと頭を上げる


「誰かのため?」

「おお、別に誰でもいい、
 例えば…お前ェが好きな男とかによ」

「グリードさん?!」


ニヤニヤと笑いながらミツキの額をちょん・と小突く
ドルチェットは、グリードのとんでもない発言に眉間に皺を寄せている


「そっかぁ…誰かのためかぁ〜…」


ムムム〜ッと一考すると、ぽん・と手を叩いた


「じゃ、決定!」

「お、決まったか?それじゃあ、頼んだぞ」

「…今から?」

「今から」

「……はぁい;;;」


緊張のためか、顔が紅潮しているミツキを
心配そうに見送るドルチェット

グリードはと言えば、グラスを片手にどこか楽しそうにしている

ミツキは、椅子から立つと、その場で歌い始めた





" いつの世も 変わらぬは 恋心 心奪う突然に "




聞こえてきた歌声に、客から声が消えた




" 眼差しに想い寄せつ 気遣いつ 落ちていく 恋の淵へ "








ふと、ミツキが遠い目になった


"誰か"を思い出したかのように







" 人の世は変わらずに 繰り返す 日は昇り また沈む "




そんなミツキの様子に、二人はいち早く気がついた




" 恋もまた 愚かさと 寂しさと 嬉しさの 甘き香り "




いつもより低音の、奥に響くような声が酒場を包んだ




" 日は昇り また沈む いつの世も変わらぬは 恋心 "


" 落ちていく 恋の淵へ 二つの心 "






歌い終えた後、ぺこり・と一礼した


しん…としてしまった酒場に、ミツキは戸惑いを隠せなかった




「う、うわぁ…;;;もしや、失敗?」


さーっと血の気が引いたミツキだったが、
小さかったが、どこからか拍手が聞こえてきた

と、それをきっかけに拍手が沸き起こった


「え、えっと、あ、ありがとうございましたぁ!」


再び一礼するミツキ

ちらっとカウンターを見やる


酒場の主は、拍手をしてくれている
が、後ろの男は、ただぼーっとしていた


「ど、ドルチぃ?…駄目だったかな?」

「え…あ、いや、すげぇ良かったぞ」

「だって、ぼーっとしてた…」

「……あ、悪ぃ!つい…」


「聞き惚れてたか?」


くすくすと笑うグリードに、思わず赤面するドルチェット


「本当?!」

「あ…////;」

「わかりやすい奴…(くすくす)」

「グリードさんッ!!///」

「しかし、これまた珍しい歌だったな」

「えぇ、はい、まぁ」

「なぁ、ミツキ…"誰"の為に歌ってたんだ?」

「え……」


グリードの一言に、ミツキは一瞬固まった

が、すぐに笑顔になると


「誰のためって…お二人の為にvvなんちゃって☆」


あははっと冗談を言ってのけた

グリードも、敢えて追求しようとは思わなかったらしい
それじゃ疲れたので・とミツキは自分の部屋に戻っていった






*-*-*-*-*-*-*-*-*-*-*-*-*-*-*-*-*-*-*-*-*-*-*-*-*-*-*-*-*-*-*-*-*-*-*-*-*







初めは本当に、二人のために…
と言うよりも、ドルチェットのために歌おうと思ってた



だけど…



遠く、遠くに見える後ろ姿


決して振り返ることのない背中


手を伸ばす


必死で 必死で




「馬鹿みたい…」




此処も好き、大好き


あの人達も、大好き




だけど





「シカさん…」





本当に逢いたかったのは…違う人