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At least, please see a good dream in sleep.






*---Somniloquy---*







「もう、眠ったかな」


イルカは、そぉっとベットで眠る少女の顔をのぞき込む


少女の名はトキヨ
少し前にカカシが連れてきたと、五代目火影・ツナデ様から聞いている


初めはカカシの家に居候をしていたのだが、
居候1日目にして、「かくまって下さい!」と涙目で訴えられ、現在に至る



「…よし、ちゃんと眠ったな」



最近では、トキヨの寝顔を確認するのが日課になってきていた


イルカの住むアパートは小さめで、ベットも1つしか置いていない
なので、ベットを彼女に与え、自分は専ら布団で生活をしている
正直言えば、少しきついものもあるが、
こんな可愛らしい寝顔が見られるのだ・と思えば、苦にはならなかった


普段は割と大人びている彼女も、寝顔はとてもあどけない
規則正しい寝息も、どこか幼くて、ついつい聞き入ってしまう


…実を言うと、この日課、彼女本人はまったくもって知らない
そりゃ眠っているわけだし、気が付かないのも仕方はないのだが



「(というか、バレたら嫌われるかも;;;)」



それだけは絶対に勘弁なので、バレないようにするし、
これからも言うつもりはまったくない



「………しかし……」



イルカは、先程の、一楽からの帰り道の話を思い返していた



<ただいま>も

<いってらっしゃい>も、まともに交わせない家



勿論、イルカは、そんなことは嫌と言うほど経験している





あの日、九尾の妖狐に奪われた、大好きな両親





あの人達が居なくなって、
<ただいま>も<いってきます>も言えなくなった

あの人達が居なくなって、
<おかえり>も<いってらっしゃい>も聞けなくなった


思い出すたびに、胸が詰まってしまう…





そういえば、この前、久しぶりに会ったシカマルが
「ミツキの奴は寝言がうっせー」とか愚痴をこぼしていたのを思い出した



ミツキは、トキヨが連れられてきた同時期に、
シカマルが連れてきた少女だ
二人で旅をしていたが、夜盗に襲われたため、
一度はぐれてしまったのだと聞いた


トキヨとはまったく正反対で、
のほほんとしている少女だったかと思う
確かに、彼女はぽや〜っとした寝顔で確実に寝言を言うだろう



トキヨはと言えば、まったく寝言は言わないタイプだと
つい先程までは思っていた



「ん…っ」
「……トキヨ?」



ふと、トキヨの寝息が乱れた


すぐに察知したイルカは、また彼女の顔をのぞき込んだ



トキヨは眉間にしわを寄せ、どこか苦しそうだった
具合が悪いわけではなさそうだ



おそらく、夢見が悪いのだろう



う〜んう〜んと、軽く唸った後、


「…イルカさ……」


小さな、小さな声だったが
どこか必死で、どこか苦しそうに、彼の名を確かに呼んだ


「…ッ!」


思い切りのぞき込んでいたイルカは、
名前を呼ばれて、思わず近づけていた顔をバッ!と離した
胸に手を当てると、心臓がばくばく言っている


今まで、トキヨが寝言を言ったことはまったくない
本人も「寝言は言わないタイプ」だと断言していた


しかし、確かに今、トキヨは「イルカ」の名を呼んだのだ


焦りに焦っているイルカのことなぞ露知らず、
トキヨは眉間にしわを寄せたまま、
ぽつぽつと本当に消えそうな声でイルカの名を呼び続けていた


「…ぃルカさん………イルカさん…」



あまりにも

あまりにも悲痛な声に、イルカはもう一度ベットに近づくと
右手で彼女の左頬をそっと包んだ
そして、ゆっくりとかがみ、耳元に顔を近づけると、静かに囁いた



「大丈夫だ…俺は、此処にいるよ、トキヨ…」



すると、声が聞こえたのか
彼の右手の暖かさが伝わったのか
それとも別の何かか、それはわからないが、

トキヨの顔がふっと緩み、穏やかになっていった

そして、今度は安心した、ふんわりとした口調で



「イルカ…さん…」



と、呟いた




柔らかい笑みを湛えながら





「トキヨ…」



もう一度、名前を呼んでみるが
既に寝息は規則正しさを取り戻していた



が、構わずイルカは、言葉を続けていった



「俺、君が来てくれて、本当に嬉しかった…
 君のおかげで、<ただいま>も<おかえり>も
 もう一度、言えるようになったんだ…

 本当に、本当に、ありがとう」




言い終えると、静かに立ち上がり、自分の布団の中に潜り込んだ







聞こえていないとわかっているからこそ、言えた


あんな恥ずかしいこと、起きてるときになんか言えないから


だからこそ、せめて夢の中の君には届くようにと願う


ありがとう、トキヨ…







。。。翌日。。。



「ふあぁ〜っ!おはよう御座います、イルカさん」

「あぁ、おはよう
 …あの…、夕べのことなんだけど、覚えてる?」

「へ?何をです?」

「あ、いや、えっと、覚えてないならいいんだっ!ごめんなっ!
 じゃ、じゃあ、俺は仕事に行って来るから!////」

「は〜い、いってらっしゃ〜い」



ぱたぱたと、急ぎ足でアカデミーへと向かうイルカの背中を見送りながら、
トキヨは手を振り、優しく微笑みながら、ぽつりと呟いた



「……俺の方こそ、ありがとう…イルカさん…」






朝日が昇り始めた木ノ葉の里で


二人の心が やんわりと暖まっていった