人は其れをデートと呼ぶらしい



*---Mandarin color feelings---*



「グリ〜!呼んだ〜?」


ひょこひょこと階段を駆け下りてきたミツキ

あの後直ぐに、マーテルはミツキを呼びに行った


「あー、実はな…」


どこか真剣なグリードの表情に、ミツキも少し緊張した


「色気がねぇ」

「…………はぁ?」


真面目な顔からは、想像もしなかった一言に、
ミツキはぽかんとしてしまった


「だからな、昨日歌ってんの見てて思ったんだけどよぉ、
 その服じゃ、こう…色気がねぇ!って思ったわけなんだわ」

「はぁ…;;;」

「お前は、その変わった服しか持ってねぇだろ?」


確かに、今着ている制服以外の持ち物は例の紺色の鞄のみ
洋服は一切持ってはいない

今までは、マーテルの服を借りていたが、
いつまでもそう言うわけにはいかない


「って訳で、服買ってこい」

「でも、自慢じゃないけど、お金持ってないよ」

「ンなこたぁ知ってるよ、これ使えや」


ぽ〜いと小さな袋を投げるグリード
慌てて受け止め、中を見ると、かなり高額だろうお金が入っていた


「あの…これ…」

「そいつを使って買ってこい」

「でも、これってお店のお金じゃ…」

「…………ミツキvv(にーっ)」

(あの笑みは…まさかこの金はパクリもん?!)


あわわ!と真っ青になるミツキに、
グリードは喉で笑いながら手をひらひらと振った


「クックッ…!ばぁか、盗んだもんじゃねぇよ」

「は、はぁ…」

「ちょっと拝借しただけだ」

「パクリもんじゃんっっっ!!!」


がびーん!と効果音が出てきそうな程の顔でビビるミツキ
グリードは「気にしない気にしない」と笑って誤魔化した


「とにかく、そいつ使って買ってこいや」

「〜〜〜っ;;;…あ、でも、私まだダブリスの地理覚えてないよ
 この間のお買い物は地図貰ってたけど、正直わかんないよ?」

「そうか〜…そいつぁ盲点だったなぁ〜…」


この会話をじっと聞いていたマーテルは、
ハッと、何かを思いついたらしくニヤッと笑うと、
奥からドルチェットを連れてきた


「痛ぇ痛ぇ!!なんだよ、おい!!」

「お、流石マーテル☆」

「でしょう☆」


ニヤリと笑うグリードとマーテル
その笑顔に、ゾクッと怖気がしたドルチェットは、
隙を見つけて逃げようと試みようとしたが…


「あのね、ドルチェットvv」

「はいぃぃっっ!!」

「ミツキの買い物に付き合って上げて欲しいの☆」

「……は?」

「おー!そいつはいい案だ!そうして貰え、ミツキ!」

「え?」

「ほらぁ、こいつ犬だから迷子になっても鼻が利くし!」←デートのお膳立てしてやってるのよ

「ドルチェットなら、ここまで匂いで帰れるしな!」←俺行くの面倒だしさぁ

「ミツキが好きな洋服を選んで大丈夫よ!
 ファッションのアドバイスなんて、こいつ出来ないし!」←このまま付き合っちゃいなさいよ

「俺やマーテルも、すご〜〜く行きたいんだが、
 生憎今日は俺達は忙しくてなぁ〜!」←楽しみはとっておきたいだろ

「「だから、ね(な)!!」」←いいからさっさと行けぇ!

「な、なん、ええぇぇ?!」


焦りに焦っているドルチェットを放置して、
グリードとマーテルは勝手に話を進めている
ミツキも、二人の話に対して、にーっと笑うと、


「うん!わかったぁ!」


と、元気に、そらもう元気に答えた


「え?!何だよ?!どういうことだ?!」

「んとね、これから洋服買いに行くの!だから、一緒に来て欲しいの!」

「…え…あ…はぁ?!」

「駄目?忙しい?」

「…や…その……」

「勿論、無理にとは言わないよ!別に一人でも行けなくはないし…
 あ、でも、迷子になったらごめん!」

「……まいご…に…」


<ドルチェット脳内>ミツキが迷子になる→不埒な野郎共に襲われる?!→自主規制☆


「……ッ!!行くっっ!!!一緒に行くっっ!!!」

「え、いいの?」

「(こくこくこくこく)!!」

「ありがとう!(にこぉ)」

「〜〜〜〜〜!…ぉぅ…////」


こうして、ミツキのお買い物に付き合うことになったドルチェットなのでした



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「ねぇねぇ、ドルチぃ!あっち見たい!あっち行こう!」

「おぅ」


きゃあきゃあと楽しげに見て回るミツキ
それを見て頬を緩ませながら着いていくドルチェット


「これいいなぁ、ねぇ、これ、どうかな?」

「ん……いいんじゃねぇの?」

「ん〜ん〜…」


服を取っ替え引っ替えしながら悩むミツキが微笑ましくて、
買い物を付き合って良かったと、内心涙を流して喜んだ


「お嬢ちゃん、折角だから着てみたらどうだい?」


店主らしきおじさんが、笑顔でミツキに勧めた


「え、試着していいの?」

「おうとも!」

「おっしゃ!じゃあ着てみる!ドルチぃ、見てくれる?」

「お、おう…」


るんるん気分で、いくつかの服を手に取り、
奥のスペースに入り、カーテンを閉めた


「兄さん、あの子はあんたのコレかい?」


店主はニッと笑い、小指を立てる
ドルチェットは顔を真っ赤にすると大慌てで否定した


「ち、違っ!!そんなんじゃ…!!」

「だって、親子な訳はないだろう?
 兄弟には見えないし、友達とも違う気がするんだがなぁ?」

「だから違うって……!」

「ああ……兄さんの片思いかい…成る程ねぇ…」

「〜〜〜!!///」


その言葉に動揺したドルチェットを見て、
満足げに笑いながら、店主はカウンターに戻った


(なんなんだよ!畜生!///)


心の中で悪態を付く
ドルチェットはふと、辺りを見回した

よく見ると、店にいるのは、大体がカップルか女同士だった


(……成る程な…これじゃあ間違われるわけだ…)


フ〜ンと軽く見回した後、ミツキが出てくるのを待った


人の流れを見ている内に、ふと思った

ここダブリスは、観光地としても有名なためか、驚く程人の出入りが激しい
そのお陰か、町は賑やかだし、特産物である畜産物なら、困ることは一切ない

逆を言えば、こういう人の出入りが多い町ほど、裏の人間達が動きやすい
中央なんかは、軍のおかげでなかなか厳しいため、
こうした観光地は、まさに打ってつけだ



「ドルチぃ」

「ん?」


少し小さめの声で自分を呼ぶ声に振り向く


「こういうの、どうかなぁ?」


カーテンの中から、照れながら出てきたミツキ

着ているのは、白地のワンピース
七分袖で、膝丈までのスカート、
袖とスカートに、栗色の糸で刺繍が施されている、シンプルなものだった


「………〜〜〜〜ッッ////」

「ど、ドルチぃ…?」

(す、すっげー良い…ッvv幸せ……ッ!!!<感涙)


その声は、ドルチェットには届いていない様子


「ドルチぃ、ドルチぃってばぁ」

「え、あ、お、おう、なんだ?!」

「これ、そんなに駄目?」


どうやら、無反応なドルチェットに、不安になってしまったらしい


「駄目じゃない!!全然駄目じゃない!!似合ってるぞ、うん!!」

「本当?」

「ほ、本当だ…!」

「そっか、ありがとう!じゃあ、次の着てみるね!待ってて〜!」


ドルチェットの言葉に、嬉しそうに笑うと、
ミツキはまた、カーテンの中に消えた


「………はぁ……///;」


こんなんじゃ、心臓がいくつあっても足りやしねぇ…そう思ったドルチェットでした




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「で、買ったはいいけどよ…」


はぁっと溜息をつくドルチェット

夕暮れ時のこの時間のダブリスは、人の流れが一層激しい
人混みが嫌いなドルチェットは眉間に皺を寄せた


「ん〜…すごい人だね…はぐれちゃうかも、私ちっこいし」

「…んな目に合わせられるか……かといって…(ブツブツ)」

「ドルチぃ」

「……あ?どうした?」

「手ぇ、繋ご」

「……………は?」


突然の発言と差し出された右手に、困惑するドルチェット


「ほら、手ぇ繋いでたらはぐれることないじゃん!」

「そ、そうだけど…」

「はい!」

「………////;」


ドルチェットは、のぼせ上がった頭でしばらく考え込んだが、

(ミツキが言ってるんなら…仕方ない…か///)

と、結論付け、荷物を右手に持ち替え、
おそるおそるミツキの手を握った

手を握られ、笑顔になったミツキ
そんなミツキの顔を正視できず、思わず顔を逸らす


「行くぞ」

「うん」


小さく、柔らかい手

その温かさに、自然と笑みがこぼれる


優しい人

愛しい人



「今日は、ありがと、ドルチぃ」

「おう」



気が付けば日は暮れて


黄昏色の町

黄金色の眩しい笑顔に

茜色に染まった頬


そして


暖かな、蜜柑色の気持ち…