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お願いだから、離れていかないで



*---It dawns---*



「いってきまぁす!」


酒場に響き渡る声

本日、初の夕飯当番になったミツキ
初めて廻ってきた当番なので
うきうき気分で買い物に出かけた


「まったく、元気ねぇ、あの子は」


はーぁ・と、どこか楽しげに溜息をつくマーテル


「ミツキが来てから、ここも随分変わったな」

「あら、ロア」

「よくはわからないが、なんとなくそんな感じがする…」

「…そうね、私もわかるわ」


「おい、ミツキ何処行ったんだ?」

「ドルチェット」

「ミツキなら、夕飯の買い物よ」

「あぁ…今日はあいつの当番なんだっけか」

「楽しみなんでしょ?初手料理が」

「あぁ……って、マーテルッッ!!」

「はいはい、ごめんなさいね」


こんなどこか幸せそうな喧嘩も
ここ最近になってから出来るようになった

ミツキがこのデビルズネストに来てから
あれほど血の気の多かった連中が
どことなく柔和になった気がする

それは、この3人を含め
主であるグリードもそうである

ふと、マーテルは一考すると、
真剣な顔で二人に話しかけた


「ねえ」

「どうした?マーテル?」

「そろそろ言うべきなんじゃない?」

「何をだ?」

「……私たちの事よ」

「…は?」

「私たちの…この体の事よ」

「「!!」」


マーテルの言葉に、二人は眉間に皺を寄せた
特にドルチェットの顔は、険しくなっている


「なんで…なんでわざわざ言う必要があんだよ…」

「ドルチェット…」

「遅かれ早かれ、絶対にいつかはばれるじゃない
 だったら、今のうちに伝えておいた方がいいと思うのよ」

「お前…何言ってるのかわかってんのか?!」

「元々あの子はあんたが間違って連れて来ちゃった子…
 …あの子は…きっと、ここに居るべきじゃないと思うの」

「どういう、意味だよ」


マーテルは、悲しげに目を伏せた


「あの子は…こんな裏の世界に居るべきじゃない…
 だけど、あの子が望むなら此処に居させて上げたい
 その為には、絶対に避けては通れないことなのよ」
 
「それは…それはそうかもしれねぇけど…っ!」 

「じゃあ、このまま黙ってるつもりなの?
 あたし達のこと…あんたのこと…それに…」

「…俺は…俺は…あいつに化けモン扱いされんのは…後免だ…」 

「ドルチェット…」


自分が合成獣だと知ったとき、
今まで笑顔を向けてくれていた少女は、

一体どんな顔をする?
どんな目で自分を見る?

こんなに想っているのに…

「化け物」と言われたら?
「化け物」と見られたら?


「良い機会だ、言った方が良いかもしれんな」 
 
「ロア?!」

「ミツキだって、仲間だ
 仲間なら知っておかないといかんだろう」 

「…そうかもしんねぇけどッ!」 



「ただいまぁ!」


明るく暖かい声が酒場に戻ってきた


「ミツキ…!」 

「あ!良かったぁ!みんな居るね!!
 じゃっじゃじゃ〜ん☆今日はなんと豪華に肉を買ってきましたぁ!
 これねぇ、実はかなりおまけして貰ってさ〜!!」


にこにこと、いつものように話すミツキ

いつもはその笑顔が嬉しいのに
つらくて、目線を外してしまう


「…あれ?どうかしたの?」

「……あのね、ミツキ…」

「ミツキ、荷物、しまって来いよ」

「…?…はぁい」


ぱたぱたと厨房へ走るミツキを3人は見送った


「ドルチェット…あんたッ!」

「……話す……」

「はぁっ?!」

「俺が…話す…」

「ドル…?!」

「だから、お前らは口出ししねぇでくれるか?」

「ドルチェット…」

「…お前がそうしたいなら、そうすればいい」

「……わかったわよ…ちゃんと話すのよ」

「ワリィな」


本当はすごく嫌だった
どうせなら、このまま黙っていようと思った

だけど…

マーテルのあの言葉が頭にこびりついて離れない


『あの子は…こんな裏の世界にいるべきじゃない…』


「戻りました!で?話ってなぁに?」

「…俺が、話すから…俺の部屋に来てくれるか?」

「…?…うん」


きょとんとした顔で頷くミツキ
ドルチェットの心中は複雑だった







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「それで、なんの話?」


ドルチェットの部屋に着くなり、
ミツキはベットにちょん・と座った


「ドルチぃ?どうかしたの?」

「………。」 

「ねぇ、ドルチぃ?」


言わないといけない


「…ミツキ…」

「なに?」 

「ここが、好きか?」

「うん、みんな優しいし、面白いし!」

「…ずっと、居たいか?」

「うん!」

「…なら、言っておきたいことがあるんだ」

「?」


軽く深呼吸をする


「その…俺達は…」

「うん?」


笑顔が言葉を詰まらせる


「俺達は…人間じゃ、ないんだ…
 グリードさんはホムンクルスで…
 実際は200年生きてて…だな…
 その…俺達は、軍の研究所で実験体にされて…
 つまり……合成獣…なんだ…」

「……そっか」

「……え……それだけ?」


あまりにも予想外の展開に、
ドルチェットは、ぽかんとしてしまった


「怖く、ないのか?」

「どうして?」 

「どうしてって…俺達は半分別の生き物で、
 ロアは牛で、マーテルは蛇で、俺は…犬で…」

「だから?」 

「だから…俺は、普通の人間とは違うんだぞ?!」

「それがいけないことなの?」 

「…ミツ…キ…?」 


ミツキは、いつものように微笑んでいる

正直、ミツキは元々知っていたのだが、
ドルチェットの、あのつらそうな顔を思い出すと

やりきれなくって

だからこそ笑顔で続けた


「だって、ドルチぃはドルチぃだよ?
 合成獣になって自我を失ったとか言うなら別だけど…
 あたしの知ってるドルチぃは、
 照れ屋で意地っ張りだけど、優しいひと」

「…!」


合成獣になって、
研究所でモルモットのように扱われた日々
科学者達の、実験動物を見るような視線

"人間"を捨てられた俺を

"人間"だと

"俺"は"俺"だと

その笑顔が認めてくれている


「…でも、きっとつらかったよね?
 なのに、話してくれて、ありがとう」

「ミツキ…!」


どうして?

どうしてこいつは、
今までずっと待ってた一言を、
欲しかった言葉を言ってくれる?


「犬との合成獣でもいいの
 あたしはドルチぃが好きだから」 

「………え?」

「勿論、グリも、マーテルさんも、ロアさんも、みんな大好き!」

「あ…そう、か…」


そっちの"好き"か…と、
心臓を跳ねさせた自分が、正直情けなくなった


「それじゃ、夕飯の支度に行ってきてもいい?」

「あ、おう、手間取らせて悪かったな…」

「ううん!本当に、ありがとうね、ドルチぃ!
 大切なこと、うち明けてくれて、嬉しかったよ!
 夕飯、期待して待ってろよぉ〜☆」

「ん…わかった…」


ミツキは、にーっと笑うと、ドルチェットの部屋を出た
残されたドルチェットは、はぁっと大きく溜息をついた


「うち明けてくれて嬉しかったってか…」


この気持ちも、うち明けたら、嬉しいって言ってくれたかな…


「…出来るか、畜生ッ!/////;」




頭を抱えて悩む、ドルチェットだった







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「ドルチぃ…」


廊下を歩いていたミツキは、ふと立ち止まった


「…ごめんね…」


ふと零れ落ちた"好き"という言葉


本当は、貴方のことが好きなのに

素直にそれが伝えられないのは…